非上場同族会社で、経営に関わっていない少数株主にできること(権利の内容)

株式が証券取引所に上場されていない会社、すなわち非上場会社においては、多数派の支配株主の利益を図ることに偏った経営がなされている場合があります。このような場合に経営に関わっていない少数派の株主(このような株主を本コラムにおいては「少数株主」といいます。)は、どのようなことができるのでしょうか。

まず、少数株主には、会社から直接に経済的利益を受ける権利、すなわち「自益権」がありますので、これを行使することが考えられます。自益権の具体的な内容は、以下のとおりです。

○自益権

自益権の種類 内容
剰余金の配当請求権(453条) 会社から剰余金の配当を受ける権利
残余財産分配請求権(504条) 会社が解散した際に残余財産の分配を受ける権利
株主名簿の名義書換請求権(130条、133条、134条)[1] [2] 株主名簿の名義書換えを請求する権利なお、株券を発行していない会社では、株主名簿の名義書換えが、株式譲渡の第三者(会社を含む)に対する対抗要件となります。また、株券を発行している会社の場合は、株主名簿の名義書換えが会社に対する対抗要件となります。
株式買取請求権(116条、182条の4、469条、785条、797条、806条) 株式譲渡に会社の承認を要するとの制限を付している会社が株主による株式譲渡を承認しない場合の当該株主や、株式の併合・合併等に反対した株主が、会社に対してその保有する株式の買い取りを請求できる権利
取得請求権付株式の取得請求権(107条2項2号、108条1項5号、同2項5号) 取得請求権付株式(当該株式について、定款において株主が当該株式会社に対しその取得を請求することができる旨が定められている株式)の株主が、株式の取得を会社に請求するできる権利
単元未満株式買取請求(192条) 定款で、株主総会等において議決権を行使することができる単位となる株式数(一単元)を定めてある場合に、当該単元未満株式を有する株主がその単元未満株式の買取りを会社に請求する権利

 

しかしながら、例えば、剰余金の配当請求権は、株主総会における議決権の過半数の賛成が必要となります。したがって支配株主が賛成しない限り、配当がされることはありません。

そこで、次に、株主が会社経営に参与したり、取締役等の行為を監督是正する権利、すなわち「共益権」を行使することが考えられます。共益権の具体的な内容は、以下の1〜5のとおりです。

1. 株主総会に関する権利

権利の内容 行使要件の概要 内容
株主総会における議決権(308条) 株主であれば行使可能 株主総会における決議に参加する権利
株主総会における説明請求権(314条) 株主であれば行使可能 株主総会において、取締役等の役員に、説明を求めることができる権利
累積投票請求権(342条) 株主であれば行使可能。 株主総会において2人以上の取締役を選任する際に、1株に付き、選任取締役数と同数の議決権を行使できる累積投票を行うことを請求できる権利但し、多くの会社では、定款で累積投票はできないものとされている場合が多い。
株主総会招集権(297条、325条) 議決権総数の100分の3以上 ☆※ 取締役に対して株主総会の招集を請求し、それがなされない場合には裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集することができる権利
議案提出権(304条)[3] 株主であれば行使可能(但し、その株主が議決権を行使できる事項に限ります。) 株主総会の目的である事項について議案を提出することができる権利
株主提案権[4](303条) 株主であれば行使可能(但し、その株主が議決権を行使できる事項に限ります。)なお取締役会設置会社の場合は議決権総数の100分の1又は議決権300個以上 ☆※ 一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる権利
総会検査役選任請求権(306条) 議決権総数の100分の1以上 ☆※ 株主総会に先立って、その招集手続及び決議の方法を調査させるための検査役の選任を裁判所に申し立てることができる権利
総会決議取消訴権(831条) 株主であれば行使可能 株主総会の招集手続や決議の方法・内容について定款違反等があった場合に、決議から3か月以内に、決議の取消を求める訴えを提起することができる権利

 

2. 業務執行に対する監督

権利の内容 行使要件の概要 内容
取締役会招集請求権(367条)Ø  取締役会設置会社に限ります。 株主であれば行使可能(但し、監査役設置会社や委員会設置会社等は除きます。) 取締役に、会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款違反行為や、そのおそれがある場合に、取締役会の招集を請求することができる権利
業務執行検査役選任請求権(358条) 議決権総数又は発行済み株式[5]数の100分の3 ☆ 会社の業務の執行に関して不正の行為又は法令・定款違反の重大な事実が疑われる場合に、会社の業務及び財産状況を調査させるための検査役の選任を裁判所に申し立てることができる権利
代表訴訟提起権(847条) 株主であれば行使可能 ※ 会社に対して、役員等の責任追及をする訴訟を提起するよう求め、又は一定の場合には直接訴訟を提起することができる権利
取締役等の違法行為差止請求権(360条、422条) 株主であれば行使可能 ※ 取締役に、会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款違反違反行為や、そのおそれがあって、会社に著しい損害が生じるおそれがあるときに、その行為の差止めを請求できる権利
解任請求権(854条) 議決権総数[6]又は発行済み株式[7]数の100分の3以上 ☆※ 役員の職務の執行に関して不正の行為又は法令・定款違反の重大な事実があったにもかかわらず株主総会で解任されない場合に、当該役員の解任を請求する訴えを提起することができる権利

 

3. 会社の状態を把握する権利

権利の内容 行使要件の概要 内容
会計帳簿閲覧権(433条) 議決権総数又は発行済み株式[8]数の100分の3 ☆ 会計帳簿ないしその電磁的記録の閲覧又は謄写を請求する権利
各種書類閲覧等請求権・定款(31条2項)

・株主名簿(125条2項)

・株主総会議事録(318条4項)

・取締役会議事録[9](371条2項)

・計算書類・事業報告・附属明細書(442条3項)

・全部取得条項付種類株式を取得する場合の取得対価等に関する書面等(171条の2)

・株式等売渡請求をする場合の当該請求に関する書面(179条の5)

・株式の併合、吸収合併、新設合併等を決議する場合の関係書類(182条の2、782条3項、803条3項、815条4項)

株主であれば行使可能 会社の各種書類ないしその電磁的記録につき、閲覧、又は、謄写(株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録等の場合)若しくは謄本・抄本交付(定款、計算書類等、全部取得条項付株式取得に関する書面、株式等売渡請求に関する書面、株式併合や合併に関する書面の場合)を請求できる権利

 

4. 不利益な組織変更等を阻止する権利

権利の内容 行使要件の概要 内容
株式発行・自己株式処分・新株予約権発行の無効訴権(828条) 株主であれば行使可能 株式発行・自己株式処分・新株予約権発行について、それを無効とするための訴えを提起できる権利
設立・資本金額減少・組織変更・合併・分割・株式交換または株式移転の無効訴権(828条) 株主であれば行使可能 設立・資本金額減少・組織変更・合併・分割・株式交換について、それを無効とするための訴えを提起できる権利
新株発行・自己株式処分・新株予約権発行の差止請求権(210条、247条) 株主であれば行使可能 新株発行・自己株式処分・新株予約権発行が、法令・定款に違反し又は方法が著しく不公正で、株主が不利益を受けるおそれがあるときに、それらをやめることを請求できる権利
株式の併合差止請求権(182条の3) 株主であれば行使可能 株式の併合が法令・定款に違反し株主が不利益を受けるおそれがあるときに、株式の併合をやめることを請求できる権利

 

5. その他

権利の内容 行使要件の概要 内容
解散請求権(833条1項) 議決権総数又は発行済み株式(自己株式除く)数の10分の1以上 ☆ 会社が業務の執行において困難な状況に至り、回復できない損害が生じるおそれがあったり、財産の管理・処分が著しく失当で会社の存立を危うくするときに、やむを得ない事由がある場合は、訴えをもって会社の解散を請求できる権利
特別清算等申立権(511条1項) 株主であれば行使可能 会社の債務超過の疑い等による特別清算開始の申立てをすることができる権利

 

☆…定款でこれを下回る要件を定めることができる。

※…公開会社については行使前6ヶ月間保有要件があるが、非公開会社(全部株式譲渡制限会社)についてはかかる要件は付されていない。

 

少数株主であっても、これらの共益権を効果的に行使することができれば、株主としての自己の利益をある程度守ることが可能です。ただし、共益権の行使には、濫用を防ぐため、一定の株式保有が要件となっていることがあります。そのため、自らが保有する株式数のみではこれに足りない場合には、他の株主と協力するなどすることで権利を行使することが必要です。

なお、共益権を効果的に行使して会社経営に意見を反映していくにはその方法やタイミングなどについて検討を要します。そのため、具体的に行動を起こす前に、要件及び現実的な効果等、有効なアクションないし戦略について弁護士等の専門家に相談すると良いでしょう。

[1] 譲渡制限株式の場合は、会社の承認のある株式譲受人、指定買受人、相続その他の一般承継による取得者に限る

[2] 株券発行請求権(会社法215条)もあるが、株券発行会社に限る。譲渡制限会社が多い非上場企業においては、株券不発行会社であることが多い。

[3] もし、議案について、一旦、議決権を有する総株主の議決権の10分の1以上(定款でこれを下回る要件を定められる)の賛成を得られなかった場合は、実質的に同一の議案につき3年間は提出できない

[4] 一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権利

[5] 自己株式除く

[6] 議決権総数からは、解任議案について議決権がない株主及び役員である株主を除く

[7] 発行済み株式からは、当該株式会社自身及び対象役員の株式を除く

[8] 自己株式除く

[9] 取締役会設置会社の場合